研究テーマ_2

志手研究室で遂行している研究テーマを以下に紹介します。

建築ストックの価値

現在の建築物の価値の評価は、あまりに経済的価値に偏重し過ぎています。建築ストックの長期的な活用には、利用価値や物理的価値、歴史的価値の評価にもっと光があてられるべきです。例えば、リフォームや修繕の評価を如何に定量化できるか、建築ストックを永続的に維持できる法制度や所有者の意識は如何にあるべきかの議論が重要です。当研究室では高齢化対応のリフォーム、修繕の価値評価指標、ICTを活用した空間のモニタリング、点群データの活用、ライフサイクル・ファシリティコストのマネジメント手法を通じて建築物の健全性を評価する研究にチャレンジしています。また、建物や都市の価値とは何でしょうか。スマートビルディングやスマートシティといったワードが飛び交う中で、ユーザーや市民が求めていることは何でしょうか。このような終わりなき問いにもチャレンジしています。

BIMプロセスの本質

BIMの国際的な潮流は、IPD、デザインビルド、Pre-Construction、2段階契約、PCSAなどのように、早期に(Early)請負者が(Constructor)参画する(Involvement)するための建築生産システムの社会的基盤として運用方法が整備されつつあります。当研究室では、その中核となっている、BIMガイドライン、ISO、IFC、建設情報分類体系、仕様の記述に関して各国の動向を調査しています。また、BIMの本格的な普及では建築生産とビジネスのデータ連携を如何に考えるかが重要です。例えば設計とマニュファクチャリングとの連携では部位=概念と製品=実態をシームレスに連携させるテクニカルな方法も研究対象になります。そうしたことから、オープンな考え方でBIMオブジェクトを部品表(BOM)に展開する手法の研究に取り組んでいます。また、オープンソースによるBIMの可能性もスタディしています。

建築施工の効率化

トヨタ生産方式では、工程の中で品質を作り込むことで生産性を向上できるとされ、常に改善と標準の改訂をし続けるには計画とチェックの単位を合致させる必要があると解釈できます。このような考え方の原理原則を建築生産に適用する可能性を研究する必要があるでしょう。例えば、元請・専門工事会社・建設技能者と所属が異なるメンバーで構成される「プロジェクト」の情報を効率的に配分・集約する方法、作業状況のシミュレーションから工程を計画する手法、AIによる情報自動加工の可能性など、この分野の研究に対する興味は尽きることがありません。BIMをはじめとした建設情報管理もその一旦を担います。重複や不要な入力を排除し、データを再利用した評価・分析など、デジタライゼーションの可能性に注目しています。